事業を加速し持続可能なモデルに成長させる。 茨城県北ビジネススクール2021 第5回目、ビジネスのゴールを明確化しプロセスの設計方法を学ぶ
茨城県の県北地域から起業家を創出することを目的として始まった「茨城県北ローカルベンチャースクール」は、昨年までの3年間で、県北地域を舞台に起業家人材を育成・支援するプログラムとして実績を生んできました。今年度は、より規模の拡大や事業の加速などを目指し、ビジネスを学ぶためのプログラム「茨城県北ビジネススクール」を実施。
第5回目は2021年10月16日(土)、会場は日立シビックセンター会議室で開催しました。
ゲスト:
CarpeDiem 代表取締役
海野慧
立命館大学国際関係学部卒業 。2007年より株式会社じげんの創業期に参画。 営業、企画、マーケティングなどの職務領域において事業の立上げ及び拡大に営業責任者、事業責任者として従事。 2013年、28歳にて取締役就任、東証マザーズへ上場。 上場後は経営企画部門にてM&Aの推進を遂行。 証券会社、人材業界ERP事業会社、エンタメ事業会社、海外子会社などの代表を歴任。またNTTドコモ社とのオープンイノベーションとして協業事業の立ち上げなどを行う。 2019年退社後CarpeDiem株式会社を創業。 主にスタートアップ、ベンチャー企業向けの組織事業のコンサルティングや経営者向けのコーチングやコンサルティングを展開。[参考記事]
最初に、今回の講座は受講生のゴール設定をより高くすることを目的としていると事務局から説明。続けて、グランドルールである「①守秘義務・②批評家にならない・③ファーストペンギンを称賛する・④質問は手を上げてから考える」を確認後、いつも通り3名1組で「①呼ばれたい名前・②今の気持ち・③今日の目的」をシェアするチェックインを行いました。
やりたくてやっていたことが、いつの間にかやらなくては、に変わっていた
その後、齋藤潤一氏(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事・NPO法人まちづくりGIFT 代表理事・AGRIST株式会社 代表取締役社長)から、ゲストである海野氏を紹介。齋藤氏と海野氏は“ソーシャルビジネスで世の中を良くしたい”という共通の思いを持ち、海野氏は齋藤氏が代表をつとめるAGRIST(株)の現監査役兼アドバイザーでもあります。
海野氏は「心の動く方向に行こう。」と決意し独立したと言います。経営者のコーチングを行う海野氏は、「自身で上場などを経験する中、どこか言葉にできない違和感があった。なぜそう感じるのかを考えてみたとき、やりたくてやっていたことがいつの間にかやらなくてはいけないことにすり替わっていたことに気が付いた。結果的にそこは克服していったものの、無意識の内に捕われていた状況から抜け出すのに相当の時間がかかってしまった。これらの課題は恐らく自分自身だけではなく陥りやすい罠である、経営者こそが思いっきりやりたいことでチャレンジすべき存在であるという想いから、経営者の方々のコーチとして、ゴールを創り応援する道に進むことを決めた。」と話しました。
「ビジョンとは、言葉の通りイメージであり、どれだけ具体的にビジュアライズできるかが大事。どうやったら達成できるかわからないけど、どうしてもやりたいと思えること、周りに反対されてもやり続けていた経験を思い返して欲しい。」と続けます。
また、「やってみたら案外できた…という無双モードの感覚、1回起きたならそれは再現性がある。それまでの自分の中の当たり前の水準がズレる感覚であり、それは偶然ではなく確実に自身の中で起きていること。」とのことです。
コンフォートゾーンは、出るのではなくずらす。
大事な軸(be)について、「be(どうなりたいか)・do(行動/アクション)・have(結果)は、このサイクルで回っている。beは本質であり、その周りに観念(思い込み)がある。この観念をどうやって剥がしていくかが大事。周りから期待されているからやっていることは観念。周りに関係なくやっている内発は何かを考え、大切にしてほしい。
自身の人生を振り返った時に、エフィカシー(根拠のない自信)の高かった瞬間や、誰に言われても譲れないと考えて突き進んだ体験を思い出してみてほしい。そこにきっと皆さんの芯となる価値観のヒントがある。」と語り掛けます。
「コンフォートゾーンを出ろとよく聞くが、出ても戻るようにできている。出るのではなくずらす。ずれるのは、自分の現状の外にあるゴールに行くぞと決断した瞬間。脳内の優先順位が勝手に書き変わり、無意識に自身で意思決定して重要度が変わる(例えば、自動車を替えたら同じ車種をよく見かけるようになる、子供が産まれたら周りに子供が増えたように感じる、など)。脳は必要な情報しか取らないようにできているので、基本的にゴールが先で戦略は後になる。」と説明しました。
脳の仕組みから繋がる思考の流れ。とても腑に落ちるわかりやすい説明に、その後の感想共有の場では受講生同士の会話がたいへん盛り上がりました。
ゴール=目標ではない。
そして、次は齋藤氏がファシリテーターとなり、受講生からの質疑応答へ。
Qどのようなゴール設定をしているのか?
―私の大きなゴールの一つは既存の境界線を無くすこと。会社や地域、個人の肩書きなど、既存のアイデンティティでまとめるのではなく、未来目指したいゴールやビジョンで繋がることが当たり前になるようにしていきたい。
Qなぜそう思うようになった?
―目指すところが同じなのに、“お互いのアイデンティティが違うから手を組まない” はもったいないと思った。お手本としているのは薩長同盟。坂本龍馬は、犬猿の中である両者へ新しい共通のゴール設定をして手を組ませた。
抽象度を高めたら目指すべき世界は同じ。そうすることで新しいパートナーともどんどん新しいチャレンジができるようになる。繋がることで違う視点や新しいアイデアが生まれる社会にしていきたい。
Q「どうせ無理。」と自分を洗脳している人がまず始めるべき一歩は?
―何が無理だと自身で決めつけてしまっているのか、それを特定した上でその思い込みを外すことが必要になる。例えば同調圧力など、今まで何かしら人生において違和感を覚えてここにきている方も多いのでは?その違和感に嘘をつかないことが大事。
その上でゴールを設定すること。ゴール=目標ではない。ゴールは達成するのではなく、設定することが大事。達成したらまた現状維持になってしまう。そうならないように設定し続けることでチャレンジを続けられる。
Q本当にやりたいことの見つけ方は?
―過去に反対されてでもやってきたことや、自身で無意識的に無理せずできてしまうことなどがヒントになる。
またそこまで難しく考えずともシンプルにやりたいことをやったらいい。仕事に限らず趣味でも何でもいいから、自分に正直にやりたいことをやってみる。趣味なんかでも、お金がない、時間がない、家族との時間が、など色んな理由をつけて諦めていることはないか?そうではなく、やりたいならまずやってみたら良い。自身のやりたいに嘘をつかないでまずは一歩踏み出してみる。そうすれば色々と見える景色も変わってくる。
また仕事の面で勘違いされやすい点があるので補足すると、「仕事=お金を貰えること」と思い込んでいる人が日本には多いのではないか。しかし“仕事=どう社会の役に立ちたいか”が大切であり、もっというと「お金払ってでもやりたいことは何か」が仕事である。
仕事とは、自身が身銭を切ってでもやりたいこと。今目の前に大金があれば今の仕事辞める、というのであれば今やっていることは仕事ではなく、ただのファイナンスのための活動であるだけ、という点は抑えた方が良い。
ここまでの話を聞いて、未来を創造するワークを2人1組で行いました。「フィードフォワード(未来のビジュアライズ)/フィードバック(失敗の追体験)」を各1分半でそれぞれが問います。未来をより明確にイメージするためのポイントとして、「達成できたとして、次どうしたい?」と投げかけてあげると良いというアドバイスを海野氏からいただきました。未来の話を始めると、止まらない受講生たち。休憩時間でさえも、海野氏の周りには受講生が集まります。
全員が自分のフィールドで輝くために
その後は、受講生全員による1分プレゼン(ピッチ)。1分という限られた時間で話すのは、「タイトル・自己紹介・ビジネスの概要」。
前半後半に分け、海野氏と齋藤氏からフィードバックをいただきました。
プレゼンを聞いた海野氏は、「全員が自分のフィールドで輝くことが大事。自分のやりたいことに真っ直ぐに進んでいき、自分の周りの数人だけでも幸せにできればという想いはとても大事。」とコメントしました。
最後は、再び質疑応答の時間へ。
Qエネルギーが切れそうになった時どうしたらいい?
―休んだらいい。健康や家族など、何かを犠牲にしていて良いのか?
Qどこまで頑張ればいい?
―どこまでも頑張ったらいい。でも変に頑張っているところがあるとするなら、それは無理しているのかも。自身がゾーンに入れていればそのまま突き進めば良い。
Qエフィカシー(根拠のない自信)はどこから来る?
―自分の無意識的得意領域では発揮されやすい。ラクで楽しいと感じるものは、その人の特殊能力である。それらの領域は「できる気がする」ことが多い。
Qやることは明確なのに足が動かない時はどうしたらいいか?
―何が自身のやりたいという思いを阻んでいるのか、そもそも本当はやりたくないか。まずはそこをしっかりと明確化していくことが必要。
Q依頼(仕事)の選択基準は?
―おもしろそうかどうか。様々な出会いから起こる想像のできない偶発性が好き。
Q自己肯定感を上げる努力や、下げないためのバリアは?
―何が下げているのか?を認識する。下がっている自分を含めて認めてあげられるか。
Q捨てる勇気はどうしたら持てるのか?
―全取りできないという前提を持ってしまっている。それを取っ払ったらいい。優先順位は大事だが、優先度が入れ替わっても切り捨てるという発想はしなくていい。無論必要だと思い込んでいるものや不要なものであればどんどん捨てたら良い。
Qゴールを決めたもののわからなくなった時はどうしたら良いのか?
―それはそもそもゴール設定ができていないと思った方が良い。今一度自分のやりたいことに向き合ってみると良い。
Q周りから無理と言われた時、どう気持ちをセットしたらいいか?
―周りにそもそも言わなければ良い。周りに言われたからやめるの?と自分に問うてみて決めたら良い。
Qお金とのバランスをどうとったらいいか?
―仕事とファイナンスは別に考えるべき、というのは話した通り。ゴールが設定できたら、そこにいくらのお金が必要なのか算出すれば良い。そのチャレンジのための必要資金をどう集めるか、そこではじめてファイナンスのゴールも設定すれば良い。
今は資金調達の手段は豊富になってきている。
クラウドファンディングはじめ、皆さんの挑戦そのものを応援し投資する人も増えてきている。本音のチャレンジそのものがコンテンツになる時代なので全力でチャレンジしてほしい。
内容が盛り沢山だった、第5回講座。
プレゼン資料が具体性を増すたびに、質疑の解像度も上がり学びの意欲もどんどん大きくなるのを感じます。
最終講座は12月4日(土)。
受講生の中から選出された8名が、投資家・起業家の前でプレゼンします。
どうぞお楽しみに!
イベントページはこちら↓
https://ibaraki-kenpoku.com/?page_id=73226
ライター・撮影:宮地 綾希子