事業を加速し持続可能なモデルに成長させる。 茨城県北ビジネススクール2021 やりたいことを見つけ、資金調達可能なビジネスモデル設計を知る第6回目
茨城県の県北地域から起業家を創出することを目的として始まった「茨城県北ローカルベンチャースクール」は、昨年までの3年間で、県北地域を舞台に起業家人材を育成・支援するプログラムとして実績を生んできました。今年度は、より規模の拡大や事業の加速などを目指し、ビジネスを学ぶためのプログラム「茨城県北ビジネススクール」を実施。第6回目は、2021年11月6日(土)、茨城県庁11階アトリウムにて開催しました。
ゲスト(敬称略):
Heart Driven Fund ヴァイスプレジデント/株式会社アカツキ EDGE Lab パートナー
熊谷 祐二
2014年にiemo株式会社共同代表取締役COO就任を経て、同社を株式会社ディー・エヌ・エーへ売却。 2015年にスポーツテック事業を手掛けるSkyBall株式会社を創業し、2018年にアカツキへ売却。アカツキのesports事業責任者並びにProfessional Esports League取締役(バルセロナ)に就任。2019年8月からHeart Driven Fund ヴァイスプレジデントに就任。自身の起業・経営経験を元に主にアーリーステージの投資実行、ハンズオン支援を行う。[インタビュー記事(HP)]
公開最終プレゼンテーションを除くと最終講座となる今回。前半はゲストである熊谷氏による講演を聞き、後半は最終プレゼンターを選出するための受講生全員によるプレゼン&相互審査会となりました。
審査会ということもあって、来場時からなんだかソワソワしている様子の受講生たち。まずはチェックインをして、意識をこの場に集中させます。
熊谷氏の講演はワークショップを交えながら行われ、「自分のn年後をイメージするステップを学ぶ」「資金調達の目的・方法を知る」「資金の出し手(投資家)を理解する」の3つを軸に話が進みました。
人によってモノサシは違う
最初に熊谷氏より受講生へ出された問いは、「100万円あったらどこに投資する?」というものでした。受講生からは、様々な回答とその理由が。
それを受けて熊谷氏は、「ここに正解や不正解はない。伝えたいのは、人によってモノサシは違うということ。こういうプレゼンをすればいいというフォーマットはない。」と言います。
加えて、「組織のタイプも、“成長型”(売上・利益を大きくし続ける)・“安定型”(自分+αが生活できればいい)・“慈善型”(事業が回っていればいい)とある。将来どうありたいのか具体的にイメージし、皆さんにあったプレゼン資料の作り方や投資の得方を考えた方がいい。」と話しました。
これまで自身のビジネスと向き合い、ブラッシュアップを重ねてきた受講生。誰に伝えたいのかという新たな視点に、うなずく姿が多く見られました。
さらに具体的に話は進み、「投資する人たちが何を求めているのか・何に期待するのか」という部分を掘り下げます。投資元を銀行・ベンチャーキャピタル・事業会社・家族や友人という枠で分け、それぞれの期待リターン・KPI・求めるモノを分類。表にしてみるとそれぞれの特徴が明確になります。
「銀行に “5年後、100倍の利益を出します” と言っても刺さらない。誰にプレゼンをするのかによって、言いたいことは変わるはず。まずは相手を決めて、そこにフォーカスしたプレゼンを作成するべき。」という熊谷氏の説明に、「確かに・・・」という声が。言われれば確かにその通り。しかし明確にできている人は意外と少ないのかもしれません。
シード期の評価ポイントは創業者自身。
続いて議題に上がったのは、ベンチャーキャピタルの評価ポイントはどういった部分かということ。ステージ毎の評価基準に触れ、「シード期は、創業者自身をどれだけ好きになれるかが最も重要。それだけは替えが効かない部分であり、事業内容が変わっても構わないが創業者が変わると投資はそこで“終了”となるくらい。それに加えて、市場(ニッチ過ぎず拡大可能性があるか)とビジョン(どういう目線で未来を語っているのか)を評価ポイントとしている。」と紹介。これからシード期となる人が多い受講生たち。前回までの本講座ともリンクする内容でハッとする表情も見られました。
最終的には想いが大事。
n年後をイメージする方法としては熊谷氏自身の原体験を共有し、「みんなやり方は違う。今の時点でできるだけ具体的にn年後のイメージをしておいた方がいい。投資家のニーズに合わせたプレゼンが重要ではあるが、投資家が人である以上、最終的には想いが大事。」というメッセージで講演を締めくくりました。
その後は質疑応答へ。Slido(スライドゥ)という質問を書き込めるサービスを活用し受講生からの質問を募集しました。
Q:好きなことは失敗する確率が上がるというのはどういうことか?
―市場とのすれ違いが出やすい。市場をしっかり理解し、タイミング等をしっかり分析することで回避は可能。
Q:失敗から成功へ導くまでのモチベーションの保ち方は?
―自分ができなかった部分をできるようになれば、社会にこう貢献できるという自負があった。変数を固定化できると強く、気持ち的にもロジック的にもポジティブに変換できたのがよかった。
Q:どうやって投資したい人を見る?
―友人関係のような関係性を築ける人かどうか。素を出してくれる人。
エゴが強い(自分の中にぶれない軸を持っている)人。
Q:熊谷氏自身は何を失敗と捉えるのか?
―自分の描いた通りにいかなかった時。
Q:市場をどのように見てどのように判断している?
―大きさも大事だが、成長率を見ている。また、ミクロの数字に落とし込む。
Q:失敗しそうでも手を引かない時はあるのか?
―投資先は頭ではなく心で決めている。この人にかけたいなと投資しているので、失敗したとしても次また一緒に頑張ろうと考える。プロダクトは飽きるけど人は飽きない。
さて、後半戦は受講生全員によるプレゼン&相互審査会。受講生自身が、12月4日(土)にプレゼンテーションをする代表8名を選出します。
受講生にはそれぞれ審査基準の書かれた用紙が配られ、熊谷氏によるフィードバックもありつつ審査が進められました。
(以下各ビジネスプラン名と発表者の紹介 ※敬称略)
多様性の尊重 菜食文化にカレーでチャレンジeeee!
糸川 正浩
地球を守る森づくり
海野 佑介
うずまきタスク
大川 貴世美
メルセデスベンツを漆黒に包む
大花 佑次
“読書のまち”大子町から世界へ 地域と都市が繋がるブックカフェ
小野瀬 真実
持続可能で多様性ある農業社会を M&A×プラットフォーム×コミュニティで実現する
尾身 喜信
福祉×café×林業 木のぬくもりを感じる製品で多様性のあるつながりを創ろう
菊池 真澄
日本の農業はかっこいい!農業をみんなのサードプレイスに 農村生活体験事業
倉本 衣織
農作物を醸してワインを造り人々に提供して楽しめる場を作る
佐野 理恵
「釣り」×県北活性化
髙橋 真也
常陸牛の皮で茨城発レザーブランド
田地 大介
地球にやさしいお酒造り 持続可能なワイン造りをめざして
成田 楓
休耕地を活用したSocial Goodな花農園 Eden flower
ハートマン 彩未
最高品質の栗を最高技術の和菓子で世界へ!
藤田 浩一
常陸大宮市特化型のEC販売で市外のあの人へ 大好きな旬の美食や体験をお届け
星野 由季菜
見守り託児付きイベント
宮本 苗美
茨城のお米をもっとおいしく・楽しく・手軽に KENPOKUお米定期便
森尾 里美
奥久慈高校生リアルビジネス構想 〜高校生と企業が作る B-PARK OKUKJI〜
横山 治輝
計18名がプレゼンを終え、投票の結果、以下の8名が12月4日の最終プレゼンへと進むことが決まりました。(敬称略)
・糸川 正浩
・大花 佑次
・尾身 喜信
・倉本 衣織
・佐野 理恵
・ハートマン彩未
・藤田 浩一
・横山 治輝
地方だからこその強み
この舞台に挑んだ受講生全員を讃え、熊谷氏からは以下のメッセージが送られました。
「大きくマインドチェンジできるのは人との出会いで、地方だからこその強みや原石があるととても感じている。自分や齋藤氏のような外の人とも効果的に関わりながら、地方の良さとグローバルな視点をうまく融合してほしい。」
次回は最終プレゼンテーション。
今回選出されなかったメンバーも1分プレゼンという形で舞台に立ちます。
地方の原石が輝き出す瞬間を、たくさんの人々に見守っていただきたいと思います。
ライター・撮影:宮地 綾希子