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事業を加速し持続可能なモデルに成長させる。 茨城県北ビジネススクール 2021 フォローアップ講座第3回目 メンバーの主体性を引き出す組織づくり

茨城県の県北地域から起業家を創出する目的として始まった「茨城県北ローカルベンチャースクール」は、昨年までの3年間で、県北地域を舞台に起業家人材を育成・支援するプログラムとして実績を生んできました。今年度は、より規模の拡大や事業の加速などを目指し、ビジネスを学ぶためのプログラム「茨城県北ビジネススクール」にパワーアップ。

今年度の受講生に加え過去の卒業生も対象となるフォローアップ講座の第3回目は、2021年12月5日(日)、茨城県三の丸庁舎にて開催されました。

 

ゲスト:

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社取締役 人事総務本部長/YeeY Inc. 代表

島田 由香

1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GEにて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。高校3年生の息子を持つ一児の母親。Delivering Happiness Japanチーフコーチサルタント/Japan Positive Psychology Institute 代表 米国NLP協会マスタープラクティショナー/マインドフルネスNLP®トレーナー。

 

講座の始まりは、受講生同士で「①名前・②今日聴きたいと思っていること」をシェアし合うチェックインから。受講年度を超えた3人1組でシェアし、地域で活躍する仲間として交流を深めます。

受講生からは「チームのつくり方」や「ウェルビーイングな組織づくり」「どうしてそんなにパワフルで元気なのか」「女性として働く上で大切にしていること」など、様々な質問がシェアされていました。

グループとチームの違いとは

まず島田氏から発せられた一言は、“遠慮を手放す” ということ。「謙虚・配慮と遠慮は違う。思ったこと・感じたことやわからないことは遠慮せずに伝えてほしい。」と。

そして、話はグループとチームの違いについてへと流れていきます。その違いが「よくわからない」と応える多くの受講生たち。島田氏は「TEAMとは、Trust(信頼)・Engagement(○○のために)・Authenticity(ありのまま)・Meaning(意義・意味)があって成り立つ。信頼関係はその人がありのままじゃないと生まれないし、モチベーションは自己完結するけどエンゲージメントは誰かのためにと必ず第三者がいる。そして、あなたの存在に意味や意義がある、役割があるということ。これら全てがあって、グループはチームになる。」と説明。受講生たちは大きくうなずきながらメモを取り続けます。

 

内側にエネルギーを充電しよう

「そのために、まずやることはありのままでいること。自分らしさとは何か、自分の内側に意識を向けて五感を使って見つけていく。私たちは外側にばかり意識を向けていて、内側にはほとんど向けていない。意識した先にエネルギーは向くので、外側ばかり向いている私たちの内側にエネルギーは充電されていない。1日20~30秒でいいから自分に意識を向けてほしい。」

 

「試しにやってみよう」とその場で全員、目を瞑ります。視覚情報をシャットダウンすることで意識は聴覚へ。今まで意識していなかった音や様子に気づくようになりました。

「ずっとそこにあったのに、意識が向かないと無いものになっている。目を瞑ることによって感覚が変わり、意識を内側に向けることでエネルギーが自分に溜まる。私はいつもこうやって自分でエネルギーをチャージしているから元気だし、他の人に提供できるエネルギーを持てている。」と話す島田氏。パワフルな理由をもうひとつ続けます。

「自分の嫌いなこと・苦手なことは徹底的にやらない。ワガママではなく、“我がまま”。得意なこと・好きなことは徹底的にやるし、好きじゃ無いことはチームでシェアする。自身のチームでは定期的にTEAMをチェックしていて、お互いをよく知るようにしている。」

パワフルな理由、チームとの良好な関係性。話を聞くと、全ては島田氏の ”ありのまま” が根源としてあるのだなと感じます。

「チームメイトの能力の引き出し方」については、「私が誰かを変えることはできないが、人は ”あ、変わろう“ と思ったときに確実に変わる。なので私は、その人が変わろうと思うまで刺激を与え続ける。昔はかなりエネルギーを使っていたが、必要以上に人を変えようとするのはエゴだと気づいてやめた。」と言います。「能力が引き出されていくには、コミュニケーションしかない。リーダーは、コミュニケーションって何?と考えて自分なりの定義を持っておくことが大事。」とし、「前提が事実をつくる。自分にある無意識な前提に向き合うことが大事。うまくいかないときは自分の内側を見てほしい。無意識の前提が外に溢れ出してしまっているから。」と付け加えつつ、島田氏の考えるコミュニケーションの定義 ”むきつ” を共有していただきました。

 

む「向く」:相手にしっかり向き合う。心・体・おへそを向ける

き「聴く」:相手に興味を持って耳・目・心で聴く

つ「伝える」:言ったと伝わるは違う。相手がちゃんと手にしたか確認する。良いことはどんどん自分からGIVEする。先に伝えることが重要。

 

自身が燃えていれば飛び火する

その他にも「女性として働く上で大切にしていることは何か」という質問には「男女よりも “私” 。自身のパーパスが “全ての人が自分らしく生きる社会をつくる” ことであり、議論に勝つことが目的ではないから、変に我慢する・言い負かすというようなことはしない。」と答え、「どうやって人を巻き込んだらいいか」という質問には「巻き込もうとすると、そのエネルギーで押し出してしまうので巻き込むことはできない。自分が好きで得意なことに燃えていれば、勝手に火の粉が飛んでいく。大事なのは、本気かどうか。」と答えました。

 

ネガティブ感情はラッキーと捉える!

島田氏は、Wellbeing(ウェルビーイング:心身共に健康で幸せを感じられている状態)を日本に広める活動をたくさん行っております。そんなWellbeingについても話が及びました。

「経営はあくまで結果であり、目的ではない。HAPPYを感じている人は生産性が30%高くなるなど、良い結果に繋がっている事実がある。感情にはポジティブ感情とネガティブ感情の2種類があるが、ネガティブ感情をきちんと感じることができる人がポジティブ感情を感じやすく、両方大切なもの。」と言います。

「 ”怒り“ は自分が本当はどうしたかったのか、どうして欲しかったのかを教えてくれる大切な感情。自分に問いかけ、自分のニーズを知ることができる自分の感情を感じるチャンス。”怒”・”哀” を抑えてきて “喜“・”楽” が感じられなくなり、何がやりたいのかわからないという状態になっている人が多い。」と説明。

ネガティブ感情の対処法については「泣く・誰かに言う・(手書きで)書く・動く(15~30分程度散歩するなど)」など。ネガティブ感情を上手に使えれば、ポジティブ感情を感じやすくなるとのこと。ネガティブ感情があるときはラッキーと捉え、自分と向き合ってみてはいかがでしょうか。

そしてHAPPYによる生産性の向上について、「生産性は上げるものじゃない。上がっちゃうもの。経営者の役目はポジティブな場や環境を整備すること。」と島田氏は言います。そしてwellbeingを高める5つの要素として「PERMA」をシェアしました。

 

P(Positive Emotions:ポジティブな(快適な)感情)

E(Engagement:主体的に関わる)

R(Positive Relationships:よい人間関係)

M(Meaning:意義・意味)

A(Accomplishment:達成・熟練)

 

「感じ方は主観的でいい。人との比較は手放すこと。どうしても比較したいなら、昨日の自分と比較してほしい。脳はポジティブ感情の時に広がり、新しい知識を取り入れることができるという拡張形成理論がある。逆にネガティブの時は収縮し、視野が狭くなる。どっちの脳でいたいのかは自分で決めることができるので、感じたものを自分なりに解消して今やりたいことを今やるといい。」というメッセージで話を締めくくりました。

 

戦わずして含んで超える。いい格好しようとせず私らしくあること

 

講座の後半は、質疑コーナーよりスタート。

当スクールの卒業生でありメンターである高橋美紀氏がモデレーターとなり、島田氏とのトークを進めました。

Q:今のキャリアに進みたいと思ったのはどのようなきっかけがあったのか。

―人事に携わろうと思ったのは大学2年生のとき。組織論の授業を受けてこれだ!と思うものがあった。

 

Q:家庭・育児との両立について

―元々自身の母親(専業主婦)に対して憧れがあったが、人事に出会ったときから「これが自分なんだ」と思っていたので、子育て・仕事どちらかを選択しようと思ったことはない。でもやはり忙しくて悩んでいたことを当時のリーダーに相談したところ、建設的な答えを求めていた自分に対して雇用形態変更の提案しかなかった。その後別の提案で時短勤務を試してみたが、結局仕事が好きだから元に戻した。しかし、悩んだことを取り上げてもらい試せたことで納得できたから満足している。

また、家事の分担はやりたくないことを任されるので嫌い。夫・両親のサポートで成り立っている。

Q:周囲のサポートを得られず戦っている人に対して

―「戦わずして含んで超える」と言う空海の言葉を教えてもらった時にハッとした。もっと先の視点、何のためにやるのか、どうありたいかに目的を向ける。

自身も最初は良い妻であろうと努力していたが、それは自分らしくないから、ある朝、限界が来たときに夫はそれを望んでいるわけではないことを知った。思い込んでいることはたくさんあるなと感じたし、いい格好せず私らしくあることを肯定してくれている夫を尊敬している。

 

Q:子供同士でのおもちゃの取り合い。ポジティブに解決するにはどうしたらいいか。

―徹底的に放っておく。2人でどんな結末を迎えるのか。その後「今どう思う?」とそのときの感情を確認する。

子育てに関して、今思えば「もっとこうしておけばよかった」はたくさんあるが、後悔はしていない。思いっきり感情を扱うことをしてきた。

 

Q:事業を通して子供たちに自分を好きになって自分を表せる人になってほしい。どんなメッセージを伝えればいいか。

―それを行うあなた自身が一番楽しんでいると言うことを全面的に伝えればいい。

 

Q:ネガティブに考えがちな自分を変えたい。

―この場で言っている時点でもう既に変わってきている。

ネガティブだから悪いというわけではない。ただ、自分がこの考えだからこれが得られなかったのだという理由がわかるようになる。人生は選択。自分がこっちに進みたいと言えば叶うし、脳の思考が変わっていく。

 

アイデアは実現できるから生まれる

その後は、受講生によるピッチ(2分間プレゼン)。希望した6名がプレゼンを行い、それぞれ島田氏からフィードバックをいただきました。

 

「見守り託児付イベント」:宮本苗美

「防災テック×人工林」:海野佑介

「生産者と消費者をつなげる農業ゲーム事業~育てたお米が実物になって自宅に届く稲作体験ゲーム~ 米できた!」:倉本衣織

「最高品質の栗を最高技術の和菓子で世界へ!」:藤田浩一

「Forester’s Living 〜地球にやさしい未来つくり〜」:井出光弘

「持続可能で多様性ある農業社会を〜M&Aプラットフォーム×コミュニティで実現する」:尾身喜信

フィードバックでは、明るく前向きなトーンが大事だということや、具体的に今すぐ動こうとしているもの、独自性の視点などをアドバイスいただきました。

 

「受講年を超えて繋がり合い、融合しているのは本当に貴重で素晴らしい。アイデアは実現できるものだから生まれるのだと思うので、まずは声を上げてみる。失敗というものはないので、情熱を持って改善を繰り返していけばやがて火の粉がいろんな人に移っていくもの。また来年、発展を確認できることを楽しみにしている。」というエールで第3回フォローアップ講座を締めくくりました。

茨城県北地域で共に活動する仲間の輪は、ますます熱量を帯びていることが感じられた今回のフォローアップ講座。今後も広がりを見せていくことを楽しみにしています。

 

ライター・撮影:宮地 綾希子

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