Uターンしてカフェ起業 – Tadaima Coffee 和田昂憲さん(茨城県日立市)
地方での働き方・生き方に関心が高まる中、地域でどのように働くかということに注目が集まっている。
ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト(2018年6月号)』の「ローカルキャリアのつくり方」特集で紹介・掲載された27歳の起業家が、茨城県日立市にいる。
故郷が衰退する状況に危機感を持って、Uターン。Tadaima Coffee(ただいまコーヒー)というお店を開店し、日立市から社会課題の解決にチャレンジする和田昂憲さんにお話を伺った。
Uターンし、20代で起業
「失敗してもよい20代のうちに起業したい」という考えと、「帰るたびに元気が無くなっていく故郷のために何かしたい」という想いが重なり、和田さんはUターンを決意した。
Tadaima Coffeeというコーヒーショップを開店したが、コーヒー豆は和田さんが掲げるビジョンを追求するための手段の1つにすぎないという。
– なぜ、お店の名前に「ただいま」を付けているんですか?
「ただいま」と言える場所がある社会にしたいと想い、お店をやっています。コーヒー豆自体にもこだわりがありますが、豆はビジョンを実現する1つのツールと考えています。
– 「ただいま」と言える場所がある社会とは?
「想い想われる関係」と表現していますが、相手のために自分ができることを考えてお互いに行動し合う、そんな相手がいて帰れる場所があるということです。
さらに言えば、人は生まれた時点で平等ではないのが今の社会だと思っています。海外はもちろん、国内でも、何か新しいことにチャレンジするという土台にすら立てないと感じている人たちがいます。将来的には、そのような人たちをサポートする仕組みをつくっていきたいです。
茨城県日立市への想い
18歳で地元を離れた和田さんは、当時、故郷のことが嫌いだったという。地元でよく行っていた喫茶店のマスターにも、「日立はもうダメだから帰って来ない方が良い」と言われたそうだ。
– なぜ、そこからUターンして起業を?
自分も含めて、地元のことなのにどこか他人ごとだなあと感じたんです。それに、場所が無くなるということは、自分の思い出の場所も消えることだと気付きました。
昔行っていたお祭りや学校が無くなるという、そんな危機感が大きかったです。自分に何ができるのか、地域の中に入って探したいと思い、Uターンしました。
– 故郷・日立への想いがあるんですね
ここには、自分の大切な人たちがいます。大学卒業後に、東京で就職した最初の会社で大きな挫折を味わい、鬱状態になったのですが、家族や友人たちは自分を否定することなく話を聞いてくれました。
そんな精神的に「ただいま」と言える場所が、僕にとって日立市です。この事業を通じ、一人ひとりにとって、そんな「ただいま」と言いたくなる場所をつくるサポートをしたいんです。
地方で起業するリアル
創業から約半年、和田さんの事業は順調だ。ただ、この短い間でも、様々な苦悩や葛藤は存在したという。
– 実際に地方で起業してみて、どうですか?
色んな人から助けられて現状があると思います。開業前からずっと、地域の色んな人に、人からの紹介で会えたのはすごく大きいと思います。
– 1人で戦わないということが大事ですね
本当に、そう思います。想いやビジョンをしっかり伝えて、それに共感してサポートしてくれる人に出会えたのは大きいですね。
とはいえ、会社の中のことは全て一人でやっているため、色んなことが同時にできずに悩んだこともあります。
起業して、1人で戦わない
– それをどのように克服しましたか?
まだ、途中ですが、それぞれの分野の専門家の力を借りたり、人を雇用したりして解決しようとしています。ブランディングは、地域のデザイナーさんと相談しながら進めています。接客の部分は、パートという形でサポートしてもらう予定です。
– それを実現する上で難しかったことは?
どこで、自分から仕事を切り離すかというタイミングが難しいと感じました。自分は幸運にも紹介から売上を上げられていますが、やはり稼げるビジネスかどうかというのは重要だと感じます。
重要度が高くて、緊急度が低いことに対して、自分の時間をどれだけ割けるか。それが実現できていなければ、何を自分から切り離すべきかを考えています。
地方でチャレンジする
起業した際、地方へ移住した際、1人で戦ってはいけない。
1人で戦わないためには、仲間が必要だ。その仲間づくりで大切なのが、ビジョン。自分が行う事業を通じて、どんな未来をつくりたいのかをしっかりと伝えることが求められる。
茨城県の県北エリアには、地域をもっと元気にしたいと考える起業家が集まり、仲間としてつながるコミュニティが少しずつでき始めている。
地方は、まだまだこれからおもしろくなる。
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