自身のワクワクが地域課題を解決する! 茨城県北ローカルベンチャースクール 愛され続けるビジネスとは?
茨城県北ローカルベンチャースクール第3回講座は、2020年9月26日(土)14:00〜17:00に日立市内のシェアスペースである晴耕雨読マイクロクリエイションオフィスにて行われました。
講座の始まりは、恒例となったチェックインから。自分の気持ちを講座に集中させることを目的とし、それぞれ3人1組となり名前・今の気持ち・今日学びたいことなどをシェアしました。
物事の見方をどう変えるのか?
第3回講座のゲスト講師は、fascinate株式会社代表取締役社長の但馬武さんです。但馬氏は、パタゴニア日本支社にてダイレクトマーケティング部門統括を中心に19年勤務後、エーゼロ株式会社に役員として参画。その後、2018年に愛される企業「LOVABLE COMPANY」のためのブランド戦略を構築するfascinate株式会社を創業しました。
自己紹介の後は、5人チームを作りゲームを開催。内容は、丸めた紙を順番に触れていくスピードを競うというシンプルなゲームです。チームでの試行錯誤を通して、「どうルールを理解しイノベーションを起こしていくのか」ということや、「見た目や発想を変える重要性、誰かの声を拾うことの大切さ」を受講生に共有しました。
見たい世界を創り出すことが自分の命の使い方
その後は、経歴とともに但馬氏自身のマインドに与えた影響や変化を紹介。パタゴニアでの挑戦が楽しかった日々や、その中で感じていた違和感、10倍にした売上げに対し減らない環境問題に落胆しながら、東日本大震災の福島原発事故をきっかけにさらに事業を拡大したことなど、丁寧に語ってくれました。さらに、その後の転職が欲を満たすためのものであったこと、そして家族と離れる生活は自身の命の使い方ではないと気づいたことを紹介し、「課題を解決するのが自身の人生じゃない。見たい世界を創り出すことが自身の命の使い方だとわかった」と話しました。
最愛ブランド戦略のススメ
「自分らしくあれるビジネスであれば、エネルギーが枯渇せずに挑戦し続けることができる。最愛ブランド戦略とは、自分が最も愛せる生き方であり、それを生業とすること」と語る但馬氏。課題は恐れや怖さからくるものだが、自分が見たい世界を創り出すことは喜びからくるものであると続けます。
「命の使い方が正しくないと思ったら辞めればいい。」この言葉に、ハッとした受講生も多いのではないでしょうか。
愛してやまない企業とは?
但馬氏からの、愛してやまない企業はありますか?という問いに対し、受講生からは鉄道会社の名や、憧れのシェフの話が上がりました。自身が関わり続ける企業を例に、従来の「最高・最低・最速」企業戦略が現代において本当に必要なのかを説明。但馬氏は、企業がよりその人の人生に入り込んでいく、愛される企業「Lovable company」を増やしたいと話しました。
そしてマーケティング手法を狩猟型と農耕型に喩え、「自分らしくあるから愛してくれるは絵空事。最愛ブランド戦略とはきちんとマーケティング理論のあるところに種を蒔き育てることである。自分らしくあるためにはそれが大事なこと」とし、お客さんが愛してくれることで前向きに働けるということをパタゴニアでの経験をもとに紹介しました。
その上で、リテンションマーケティングの重要性を説明。既存のお客様を喜ばせるのはとても大事だと続けました。
その後、受講生からの質問では、「自分が思う自社と他人が思う自社のギャップの埋め方」や、「奥様の存在について」「顧客へのアプローチ方法」などが問われ、ほぼ全ての会社に誤解は生じていること、顧客が魅力と感じている部分を洗い出し、その部分により磨きをかけるように進めていることや、顧客へのアプローチは頻度よりも中身が重要であること、スピードよりも顧客満足度の得られる商品をどれだけ提供できるかが重要だと説明し、奥様から得た影響については「全て吐き出して、そのままでいいんだと心の底から思えた」と語りました。
ブランドって何?
ブランディングの仕事はほぼリフレーミングだと語る但馬氏。「意味・位置付けを理解してリフレーミングする、言葉を与える、意味があり続ける存在であるためにリフレーミングをする」と言います。続いて「PURPOSE:自分が何者なのか・MISSION:何をするのか・VISION:どんな世界を作りたいのか」を各自で書き出し、共有するワークを行いました。
さらに事務局であり、前年度に地域活性化賞を受賞している今西まゆさんのデモンストレーションが行われました。昨年の発表資料を用い、今期の最終プレゼンへのイメージを共有しました。その後さらに事例をいくつか紹介し、PURPOSE・MISSION・VISIONを再考し、グループでお互いに質問をすることで内容の明度を高めました。
受講生からは、「重要視していなかった着眼点に気が付くことができた」「過去の経験や土台を思い出すきっかけとなった」などという感想があり、但馬氏からは「原体験の罠には気をつけて欲しい。それは根っから持つエネルギーかどうか。エネルギーの本質的な価値を見失わないで欲しい」という話とともに、アインシュタイン、スティーブ・ジョブズ、そしてアンドレ・ジッドの言葉が紹介されました。
サナギから、進化を続ける
最後に、藤田一照さんの著書「青虫は一度溶けて蝶になる」を紹介。「サナギは何もつけ足さず、何も減らさず、全く同じ成分のまま一度溶けて蝶へと変化していく。新しいことを始めるとき、自分にはスキルが足りないと不安になるかもしれないが、実はすでに全て自分の中にある。その見方をリフレーミングするだけ。皆さんは今サナギになる段階かもしれない。痛みを伴ったり失敗をしたりすると思うが、痛みを仲間と分かち合ってぜひ進化を続けて欲しい」と熱いメッセージが送られ、会場全体から盛大な拍手が湧き上がりました。
その後は、県内起業家との交流会。
1人目は(有)プラスチャーミングを2011年に起業、リラックスウェアとしてのふんどしブランドを立ち上げた中川ケイジさんです。自身の事業を紹介に加え、「今しんどい思いをしている人たちを少しでも楽しくできるものを提供する。扱っている商品は被災地の人たちが少しでも潤うように被災地で作っている。」とし、茨城で事業をする上で何を大事にし、何をしないと決めたかについては、「自分がおもしろいと思うことしかしない。それを信じる。」と語ってくれました。
もう1人はCANVAS合同会社・加藤雅史建築設計事務所の加藤雅史さん。コンプレックスを糧に行動をしていると語り、廃業した経験やビジコン受賞の経歴を紹介。大事にしていることは「自分らしさと理念と共感力」と話し、「何をやっても角は立つ。恐れずに行動して欲しい。」と呼びかけました。
質疑応答
―5年前の初動と現状の相違はあるか?
中川:周囲から反対されればされるほどいけると思った。当初は会社にして規模を大きくして…と考えていたが、組織づくりは苦手だと実感したので今は全て外注し、チームとして動いている。
加藤:独立時はソーシャルビジネスを楽しく仲間とやりたいと考えていた。紆余曲折あり当初は想像していない形となったが、いろいろな人に支えられてこの場(晴耕雨読)を運営している。
―お金をもらうときのハードルはなかったか?
中川:物販なので最初はあった。しかし本当に必要な人には高いという意識はなく、欲しいと思ってない人には高く感じるかもしれないが必要な人に届けばいいと思っている。当初はまずテレビに出ることを目標とし、その後どのような人に刺さったのかを分析していった。
加藤:今でも課題。街の賑やかしから入ったので、やりたいことと稼ぐことがうまく結びつけられなかった。
―競争相手や比較相手がいないものに対してどのように方向性を決めたのか?
中川:「自分と同じような思いをしたような人を元気にしたい」という軸があったので周りの情報はあまり気にしていなかった。はじめは下着市場を意識したが、同じジャンルでは戦わないと決めた。元気が出るアイテムというとなんでも当てはまるので競合は考えておらず、ストーリーを売り物としている。
―工賃の設定の考え方
中川:関わる人を全員ハッピーにしたいという理念があるため、値切り等をせず職人さんの価値を商品に載せている。誰かが泣いている商品は作りたくない。
―それでは商品価格が上がることで届けたい層に届かないのではないか?
中川:まずはその価格設定の価値があるのかどうか試してみる。
―よそ者の状態からコミュニティに入るにはどうしたら良いか?
加藤:戦略的にコミュニティ内に入っていったが、逆に頼られすぎて重荷になってしまった。今思えばちゃんと対価をもらうべきだったし、街のみんなで協力してやるべきだった。
中川:100人中99人に嫌われても1人に刺さればいい。そのスタンスで人に合わせることを辞めた。
―仲間と上手くやっていくためには?
加藤:リーダーとしての役割を全うすること。
中川:仲間(チーム)を尊敬し合っていること。
自身の内面と向き合い、たくさんの内省や気付きを得られた今回の講座。
次回の第4回講座は常陸大宮市にて開催予定。
いよいよ、受講生のビジネスプランが具体性を帯びていきます。
ライター・撮影:宮地綾希子