地域ビジネスが生まれる茨城、チャレンジする文化と起業家同士の関係人口づくり
今、多くの地方都市が、その存続に危機感を抱いている。
首都圏にある茨城県も例外ではなく、特に茨城の県北地域では、急激な人口減少や少子高齢化が進む中、地域課題の解決と持続可能な地域づくりの実現が求められている。
その対策の1つとして、地域に新たなビジネスを創出し、ビジネスの力で地域の課題を解決していく起業家人財の育成とそのコミュニティの形成が考えられる。
茨城県は、地域の資源を活かして地域の課題を解決するビジネスを創出・支援することで、県北地域の活性化を促し、新たな雇用創出や移住・定住につなげようとしている。
起業家人財を育てる超実践型スクール
茨城県が主催する「県北地域ビジネス創出支援プロジェクト」の一環として、地域課題を解決する地域ビジネス・ソーシャルビジネスをつくる講座が行われた。
県北地域を舞台に、2017年9月から12月にかけて連続性のある全5回の講座が行われ、起業家人財を育成し、地域資源を活かしたビジネスの創出につながった。
講座を通じて、32名の受講生の内、18組が新たなビジネスプランをつくり、事業化に向けて行動を起こし始めたのだ。
受講生が県主催のビジコンで受賞
そして、その受講生の内の3名が、茨城県主催のビジネスプランコンペティションの最終選考まで残り、最優秀賞・優秀賞・奨励賞に選ばれた。その3名については、MACHI LOG でもインタビューをご紹介した。
最優秀賞に選ばれた細金 寛子さんは、地域の酒蔵巡りをきっかけとしたインバウンド誘客を実現し、地域活性化を目指そうと、「SAKE TAXI」を企画・運営する起業家だ。
優秀賞に選ばれた「建築楽団」の加藤 雅史さんは、眠っている空き家をみんなでリノベーション(DIY)し、地域コミュニティを作ろうという新しいビジネスに取り組んでいる。
奨励賞に選ばれた高橋 美紀さんは、スタジオではない地域の魅力的な場所で、生きていく為に必要な身体を理論と実践で学ぶyogaクラスの運営事業をスタートしている。
ビジコンで新たな起業家人財を発掘
ビジコンでは、受講生以外にも、茨城県北エリアで新たなビジネスを始める3名が奨励賞に選ばれた。
上原 あさみさんは、武蔵野美術大学卒のデザイナー。旦那さんと2人の息子の4人暮らしで、現在は都内のデザイン会社でエディトリアルデザイナーとして勤務中。ツアーで訪れた茨城県北地域に魅力を感じ、ビジネスコンペに参加した。
茨城県北地域の特産品である「凍みこんにゃく」の普及と販売拡大、伝統の継承を目指し、新しいブランディングを提案する。将来的には、地域全体の商品開発やリブランディングにも取り組む予定だ。
川原 涼太郎さんは、茨城大学工学部に在籍する現役大学生。学業の傍ら、災害復興や地域振興などの活動にも参加し、写真家としてもイベントや商品の撮影などを行っている。
「写真家×旅×地域」をコンセプトに、県外から訪れるハイアマチュア写真家のための撮影ツアーをコーディネートするサービス、オーダーメイド撮影ツアー「いばあるき」を企画・運営する予定だ。
柴田 健さんは、複数の経営者や地域の猟友会などと共に、県内の猪狩猟支援を目標に、廃棄される猪皮を利益に変える仕組みを構築しようとしている。
害獣駆除の皮(廃棄される猪皮)を活用した新ブランド展開を目指し、猪革(レザー)製品を制作。そして、ブランド商品として販売する事業に取り組んでいく。
起業家精神の醸成と関係人口コミュニティの形成
全国各地で、起業家の育成講座が行われている。問題は、それらが「受けて終わり」の単なる起業講座になっていないかということだ。
重要なのは、講座が終わった後。地域ビジネス・ソーシャルビジネスが生まれ、起業家がビジネスを継続・成長させながら、地域を元気にしていけるのかどうかが問われている。
そのためにも、起業家が孤立してはいけない。地域全体でチャレンジする文化を育み、起業家同士がつながるコミュニティをつくることが、持続的なエコシステムをつくることにつながる。
持続可能な地域づくりを目指し、茨城県自体もそのチャレンジを始めている。