日本三大名瀑がある大子町で、起業家が地域課題を解決するアイデアソン
地域が持つ課題と魅力、地域資源を見出し、地域の稼げるビジネスプランの構築方法を学ぶ『茨城県北ローカルベンチャースクール』。2018年度の第2回目となる講座のテーマは『地域資源視察・チームビルディング』です。ガイド役を務めるのは、東北プリントワールド株式会社・代表取締役の高橋慶彦(たかはし・よしひこ)さんです。
今回の講座は、主に2つのセクションで構成。一つは、大子町各所でのフィールドワーク。現地の視察や、その場所に関わっている方から直にお話を伺いながら、地域の魅力や課題を発見する取り組みです。もう一つは、フィールドワークの結果をもとに、ビジネスプランを構築するグループワーク。チームごとに『大子町の課題解決ビジネスプラン』をつくりながら、様々なアウトプットのトレーニングを経験します。
9月22日・23日の2日間、合宿形式で開催された今回の講座の様子をレポートしていきます。
日本三大名瀑がある大子町
講座の前半戦は、大子町でのフィールドワーク。大子町役場まちづくり課の齋藤さん・吉成さん・保坂さん、茨城県職員の大兼さん、そしてNPO法人まちの研究室理事長の川井さんの協力のもと、行なわれました。
【大子町データ】
■概要
・面積:325平方キロメートル
・人口:17395人(平成30年9月1日)※毎年、400~500人ほど減少
・高齢化率:43.00%(平成30年9月1日)
・地勢:面積の約8割が山林
・気候:高温多雨で寒暖の差が大きい
・主な産業:観光(年間110万人が訪れます)、農林業
■特徴
・自然資源:袋田の滝、久慈川、男体山などが代表的。
・観光地:袋田の滝(日本三大名瀑)、温泉、プール、オートキャンプ場、旧上岡小学校など
・イベント:ひなまつり、よさこい祭り、クラフト展など
・産業:農業、林業、工業(『うまい棒』発祥の地)
・特産品:お茶(栽培の北限)、奥久慈リンゴ、漆、奥久慈軍鶏(日本三大軍鶏)、お米、こんにゃく(発祥の地と言われています)、鮎、クラフトビール
そのほか、コミュニティFM『FM大子』の運営、アーティスト誘致、空き家バンク、移住支援などの取り組みも行われています。
町の魅力を五感で探る
地域の魅力も課題も含めて、とにかく様々なことを「発見」するのが1日目の目的。訪れたのは、『daigo front』『常陸大子駅周辺の商店街』『仲野りんご園』『旧上岡小学校』『袋田の滝』を巡りました。1ヵ所に滞在できる時間は短かったものの、見て・触って・聴いて・味わって・理解して……と、五感をフルに活用したフィールドワークです。
■daigo front
JR常陸大子駅から、徒歩1分に位置するシェアオフィス。ここは大子町の最先端が集まる場所であること、そしてホテルのフロントのように“おもてなしの最初の場所”となることを目指して、『daigo front(ダイゴ・フロント)』と名付けられました。
ちなみに、daigo frontは今回のフィールドワークに協力した、川井さんが理事長を務める『NPO法人まちの研究室』のオフィスとしても機能しています。大子町の情報や地域で行われている取り組みについて伺った後、川井さんがアドバイスを贈りました。
イベントなども、熱量の高い人と一緒に取り組むと、すごく進みます。熱量のある皆様が、意見を持ち寄れば、とても良いアイディアをつくれるのではないでしょうか。
という言葉に、受講生の意気込みが高まっていきます。
■JR常陸大子駅周辺の商店街
この商店街は、もともと特産物や物資の集積地の街だったそうです。今では、シャッター街とおぼしき様子がある一方で、古民家や病院跡などの再利用も行われています。
ここでは、齋藤さん・川井さんがガイド役を務め、2グループに分かれて街を散策します。途中で立ち寄った、古くから店を構える『パンと菓子 山林堂』では、『シャーベット』というパンを買い、お店のお母さんから情報収集。一方の班では、『一日カフェ ゆらぎ』の店先で出店していた女性たちから、商店街や大子町についてお話を伺いました。
■仲野りんご園
大子の自然豊かな山間にあるリンゴ園には、約20種類のリンゴが栽培されています。ここでは、リンゴ狩りはもちろん、手作りジャムづくりの体験も可能。奥久慈大子にある60数件のリンゴ園の中でも、有数の規模を誇っているそうです。
ここで受講者たちが体験したのは、もちろんリンゴ狩り。収穫する実の選び方や採り方は、仲野リンゴ園の仲野さんからレクチャーしていきます。仲野さんが試しにリンゴを枝から採ってみると、実が切り離された枝の部分から水がはじけ出して、受講者たちは思わず歓声を上げていました。あまりに瑞々しいリンゴの様子は、現地だからこそ見える点だと言えます。
収穫したリンゴをその場で味わってみたり(かじる音まで美味しそうでした!)、仲野さんと受講者たちの間では、リンゴ農園の取り組みやリンゴを使った商品に関する話題で盛り上がったりと、それぞれに得るものがあったようです。