パソナグループが運営する観光案内所「TRAVEL HUB MIX」で実践者らがトークイベントを開催
インターネットの普及により、昨今働く場所を問わない仕事が増えてきたが、よくWEBの記事や広告で目にする「旅をしながら働く」という文句に、現実感が持てない人も多いのではないだろうか。実際には、首都圏と地方を行き来しながら働き、首都圏を離れて地方で自由な働き方をしている人はけっこういる。
2019年10月24日(木)に、パソナグループが運営する観光案内所「TRAVEL HUB MIX」にて、茨城県が主催する地域おこし協力隊募集説明会と合わせてトークイベントが行われた。
今回は「旅するように働く会議。地域資源を活用したビジネスを学ぶ2時間〜インバウンド×観光×複業×シェアリングエコノミー〜」と題し、地方で働くを実践、もしくは支援する活動を行うゲストが登壇。旅するように働くためのヒントを語ってくれた。
イベント前半に登場したのは、旅するように働いている3人のゲスト
・「旅するようにはたらく」をコンセプトにしたサービス『JOB HUB TRAVEL』を立ち上げた、株式会社パソナJOB HUB 事業統括部長 加藤遼さん。
・世界200ヶ国以上からアクセスがある訪日外国人向けメディアを運営する、株式会社MATCHA 代表取締役社長の青木優さん。
・「地方でしか体験できいないこと」を提供・マッチングするサービス『TABICA(たびか)』の立ち上げた、株式会社ガイアックス TABICA事業部地方創生室長の細川哲星さん。
ファシリテーターは、茨城県北ローカルベンチャーラボ事業の受託事業者である、NPO法人まちづくり GIFTの代表理事で地域プロデユーサーの齋藤潤一が務めた。
⬜︎起業・事業の立ち上げの背景に「地方ならではの体験」
まず各分野で活躍するゲストたちが、それぞれの起業・事業設立ストーリーを紹介。
はじめはMATCHAの青木氏から。年々増加する訪日外国人へ向け、まだまだ「本当の日本」が発信できてないと感じ、2014年2月よりメディア運営をスタート。今では数あるインバウンドメディアでも一番の規模となっている。
日本がとにかく好きだという青木氏は「日本の良さは文化の違い。自分の国には無い良さがある。そして、インバウンドが地方に行くのは東京には無い良さがあるから。その良さが地方で失われつつある。」と話し、「海外の人でもその地域にしかないヤバイ日本を見たい人も沢山いる。そんな地方の魅力を紹介して、人とお金を動かし仕事を生んで、文化を育てていきたい。」と熱く語った。
続いて、パソナ加藤氏。岐阜県生まれ神奈川県横浜市育ちの東京都杉並区在住で、「本当はミュージシャンになりたかった」という意外なバックボーンを持っているが、そのミュージシャン経験から「個人の才能をきちんと評価し、一人ひとりと向き合いたい」とパソナへ入社。
リーマンション後の若者の就職難から若者と仕事のマッチングを、そして東日本大震災で仕事を失った人へ向けたジョブマッチングなどを経験。東日本大震災で東北の人々と触れたことにより「地方には面白い個人が多い」と気づき始めた加藤氏は、時を同じくして出会った民泊・観光体験情報サイトのAirbnbと連携し、「地方でやりがいのある仕事の創出」に携わる。
その後、逆に都会の会社員が仕事にやりがいを失っていると気づき、都会の人と地方をつなぐ活動を始め、「旅するようにはたらく」をコンセプトにした地方での複業マッチングサービスJOB HUB TRAVELを立ち上げたそうだ。
ガイアックスの細川氏は、社会人2年目参加した社内ビジネスプランコンテストでTABICAを発表。TABICAは地域でできる様々な体験を紹介、販売できるサイトで、サービス開始から今年で6年目になる。
京都府南丹市生まれで、実家が寺である細川氏。その寺ではもともと地域活動を頻繁にやっていたが、過疎や高齢化の影響で活動が困難になってしまった。地域活動が無くなると、地域の人々との交流が減り、文化が失われていくと感じた細川氏。その過去の体験からTABICAというサービスが生まれたそうだ。
サービス立ち上げ当初は、軌道に乗らなかったが、徐々に利用者からの評価が高まり、今では、大手企業とのタイアップ企画も行っている。
⬜︎地方起業で大切にすること
地方と関わりながら、旅するように働けるサービスや事例を紹介したが、普通の人がいきなり地方へ行き、仕事を得てお金を稼ぐことはできるのだろうか。
「地方で仕事を創る上で、一番大切にしていることは?」という問いに、細川氏は「何が当たるかはわからない。だからこそ、どんどん行動を起こし、リソースを掘り起こしてほしい。」と話す。
また、青木氏は「自分の好きなこと、やりたいことと、これから世間のニーズが伸びるところ、その両方が重なることを仕事にすること、そしてテンションが上がることを心がけている。」と自分の信念を語った。
齋藤氏も含め「自分のやりたいことを人生の真ん中におく」という考えが共通しているゲストたち。
パソナという大企業に勤めながら、自分の好きな仕事に取り組む加藤氏は、周囲との付き合い方について「やりたいことをやっていると、最初は嫉妬される。けれど、だんだん認められ、何も言われなくなり、気にならなくなる」と助言した。
⬜︎旅する「ように」働くコツ
実際、旅をしながら働くのは難しい。移動には時間も体力も費用も使う。そんなデメリットを考慮しながら、旅するように働くコツな何なのだろう。
特定の家を持たないアドレスホッパーのガイアックス細川氏は、「正直、移動ばかりの生活は体力的にも辛い」と言いながらも「やっぱりじっとしておくのは好きじゃない。自分の気分にあった働き方をしてほしい」と、して、選択の自由を持てる環境を作ることが大切と話した。
パソナ加藤氏は「旅は方法ではなく、自分の人生の目的であり、自分の直感の赴くままに場所を移動し、そこでやりたいことをやるのが旅だと思っている。自分らしい生き方をすると、同じように自分らしい人と出会えて世界が広がるので、自分らしく生きられるような旅をしてほしい」を語りかけた。
そして、「旅をしながら働くメリットは、さまざなま違いに触れられること」と話すMATCHA青木氏は「違いを多く知ることは、アイディアの引き出しになるし、自分の体験を大切にしてほしい。」と旅するように、かつ、自分の好きを仕事にするためのヒントをくれた。
一度きりの人生、考え込まず、どんどん外の世界へ出て、経験を積み重ねることが重要だと感じた。
⬜︎地方にはチャンスが眠っている
イベント後半には、実際に茨城でビジネスをしている起業家が登場。地方起業を実情を語った。
今回登場したのは、日立市でコーヒービジネスを営むTadaima Coffeeの和田昂憲と
茨城県でシングルマザーとして子育てをしながら、パラレルキャリアで働く大川貴世美の二人。
和田氏は、病気静養のため沖縄に行った際に、様々な人ど出会って価値観が変わり、Uターンして自分の好きなことを仕事にすることを決意。大川氏は、シングルマザーでも十分な収入を得ながら、子育てする時間を確保するために起業したという経緯がある。
茨城で起業するメリットについて、和田氏は「打席に立てるチャンスが多いこと」と話す。「プレイヤーが少なくて、セミプロレベルでも仕事になる」と、小さな仕事を積み重ねていくと、大きな仕事につなげていった経験を語ってくれた。
「起業は収入がなくなるリスクもある中で、本当に食べていけるのか。」という問いに、大川氏は「今は自己投資もできるぐらいの収入はある。パラレルキャリアだと、一つの仕事がなくなっても、別の仕事があるので安心してチャレンジできるので、副業するのが良いと思う」と経験から基づくアドバイスをくれた。
そして、起業のヒントについて、やはり「自分のやりたいことをやる」こと。大川氏は「自分のやりたいことを選んでいけば、どんどん視野も広がって、ビジネスチャンスも増えた。」と熱弁していた。
この日のイベントを通じて、好きを仕事にしている人を輝き、たくさんのチャンスを呼び込んでいると感じた。好きなことであれば、場所など関係なく「旅するように働く」を実現できるのではないだろうか。
和田氏、大川氏が拠点を置く茨城県では、地域課題をビジネスを力で解決してくれる「茨城県北ローカルベンチャースクール」を主催している。
今年の募集は終わってしまったが、これから新たな起業家がどんどん育っていく予定。今度地方から、どんなビッグビジネスが生まれるのか楽しみだ。
茨城県北ローカルベンチャーラボの地域おこし協力隊は10月31日まで募集。
自分の夢を叶えながら、地域課題に貢献したい人は、ぜひ応募しよう。
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八木志芳 プロフィール
北海道札幌市出身、東京在住のラジオDJ・MC・ナレーター。
大学卒業後、IT企業・レコード会社を経て、福島県のラジオ局にてアナウンサー・ディレクターとして働くため、およそ6年地方移住を経験。2017年11月にフリーのラジオパーソナリティー・ナレーターとなる。現在、FM PORT(新潟)「LIKEY」MC、FM FUJI(山梨・東京)「SUNDAY PUNCH」レポーターなどを担当。