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日本三大名瀑がある大子町で、起業家が地域課題を解決するアイデアソン

■旧上岡小学校

1879年(明治12年)に創立され、2001年(平成13年)に閉校した旧上岡小学校。創立から120年を超える歴史を持つ小学校です。2014年(平成26年)には、国登録有形文化財(建物)に登録。現在では、すり漆講習会や各種教室の他、映画・ドラマ・CMのロケ地として、年間8~10回ほど使用されているそうです。

現在、建物の維持・管理は、大子町と管理委託契約を結んだ『上岡小学校跡地保存の会』が行っています。ここでは、保存の会の方からお話を伺いながら、実際に校舎内を視察。ノスタルジーを誘う校舎に目を奪われるだけでなく、保存の会の方に熱心に質問する受講者もいました。木造校舎が日本に複数ある中で、なぜ旧上岡小学校がロケ地として選ばれるのか。高橋さんは、

「他には無いけど、自分だけは持っている」という、感情だけでないものをきちんと提供することが、選ばれていく理由になると思います。

と、話します。上岡小学校はすべて木造で、窓ガラスやサッシなども、昔からのものがそのままです。校舎の持つ魅力を引き出し、活用する仕組みを創っていくことが大切です。

■袋田の滝

日本三大名瀑にも数えられる滝で、大子町だけでなく茨城県内有数の観光地としても有名です。周辺には、おみやげ店や自然散策スポットもあり、2017年(平成29年)度には年間55万人の観光客が訪れました。例年11月がピークで、昨年11月には13万人が観光客が訪れたそうです。近年では外国人観光客も増え、多い月だと2,500人に上るそうです。

袋田の滝を見てくれる人は多いけど、駅前商店街への流入がなかなか無い。袋田の滝から商店街への流入をどう作るかというアイデアもいただければ。

と話すのは、大子町役場の吉成さん。多くの観光客に、町全体をどう楽しんでいただくか。受講生たちは、そのヒントを見つけるため、さらに滝周辺を歩きます。

お店の様子、観光客の様子、お店にどんなものが売られているか。滝の迫力や豊かな自然に目を奪われながらも、「土曜日なのに閉まっているおみやげ店が多い」「この串焼きは、ボリュームがあるのは良いけども……女性は食べるのに苦労するかも」「観瀑台で、もっと魅力づけができないか」など、様々な気付きを話し合う姿が印象的です。

地域資源をどう活かすか-気づきの共有ワーク

1日の内に5ヵ所を視察した受講生。宿に着いた頃には、充実感と疲労感も見えます。そんな中、初日最後のひと踏ん張り。集中力を振り絞り、フィールドワークで得た気づきを振り返るワークを行ないました。場所は、袋田の滝の近くにある宿『豊年万作』です。今回の宿泊場所です。

ワークは、二部構成で進行。1つ目は、フィールドワークの中で見出した「ビジネスにつながる気づき」のシェア。チーム内で情報共有した後に、それを整理してチームごとに発表しました。

【チーム①】
・リンゴ狩りができるところは多くても、プラスアルファの個性が少ないと思う。園ごとの個性を創れれば。
・商店街には古い町並みがあるけど、古民家や新しい家などが混在し、統一感が無いのでは。
・これらを解決することで、滝から商店街への導線が作れるのではと思う。

【チーム②】
・観光資源が魅力的なので、実際に現地に行くと「すごいね」と思える。
・大子町に拠点を持っている人がいる。町の人のポテンシャルが高い。
・課題は、インバウンド対策と情報発信の少なさなのではないか。
・「デザイナーを加えて完成度の高い漆芸品のプロダクトを作る」「住民とのつながり増やす機会を設け、何度も行きたくなる場所にしていく」取り組みが、解決策に繋がるのではないか。

【チーム③】
・大子町を、1泊2日で旅するイメージがわきづらい。旅のモデルがほしい。
・商店街にチェーン店が無いのは特徴となり得るけど、現状はあまり観光向けの街並みではないとも思う。
・お客さんが来られるような旅のプランを作り、魅力ある街にシフトさせていく解決策を打ち出したい。

【チーム④】
・駅前商店街は、徒歩で歩いてまわれるし、文化遺産もあって観光資源豊かだと思う。
・街のセレクトショップがあることで、地元に密着するし、地域の人との会話も楽しめる。
・課題は、「地域資源がいろいろあるけどバラバラ感がある。まとまった街のビジョンが見えづらい」
・解決策として、「ビジョンを明確にしてテーマのある街にしていく」

「ワクワク」するビジョンから、課題解決へと発展させる

第1回の講座では、受講生たちの『ワクワク×地域課題』を発表しました。今回はさらに踏み込んで、地域の課題を解決し稼げるビジネスを創出するための、ミッションとビジョンを発表します。

起業家が、「なぜ、それをやるのか(ミッション)」「それをやり抜いた先に、どんな未来があるのか(ビジョン)」を明確にしておくのは非常に重要です。ミッションとビジョンの発表は、今後の講座でも繰り返し行なうとのこと。プレゼンテーションし、フィードバックを受け、さらに考える。このサイクルを繰り返し、自分のビジネスの“芯”を確固たるものにしていきます。

今回のワークの中で発表された、ミッションとビジョンの一部をご紹介しましょう。

【ミッション】生産者の方を喜ばせる。
【ビジョン】リンゴの加工品で商店街を活性化すること。気軽に手に取れるリンゴ商品を置きたい。

【ミッション】地元に仲間をつくる。
【ビジョン】コミュニティや人の繋がりから生まれる街の話題で盛り上がれる街づくりを。

【ミッション】移住のハードルを下げ、移住しやすい環境を作る。地域の良さを継続的なものにする。
【ビジョン】拡張性の高い地域をつくる。新しい人との交流を通じて、新たな知識が入り、様々な方向に展開できる。

自分の中の思いを整理しながら、軸を創っていく。発表する受講者の表情からは、意欲を感じます。発表を終えた後は、懇親会です。お食事やお酒を楽しみながら、受講者それぞれが持っている想いを語り、ビジネスプラン作成への熱量をさらに高めていきました。

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